二胡と交響楽のハーモニー
    熊本城復興新春チャリティーコンサートに参加して

 令和2年2月11日(祝日)熊本県立劇場コンサートホールにて「二胡と交響楽のハーモニー 熊本城復興新春チャリティーコンサート」が開催されました。
 寒い中、ロビーには早い時間からお客様の列が駐車場まで続いたため、早めの開場をお願いします。と受付から嬉しい連絡が入り早めの開場となりました。
ご来場いただきましたお客様に心より深く感謝申し上げます。

 熊本地震から間もなく4年が経とうとしています。現在熊本は、被災された方々の住まいの再建やインフラの整備など復興に向けて進められています。熊本城も、同じように復活に向けて復旧工事が行われていますが、熊本城全体の復興までには約20年の歳月と膨大な資金が必要とされています。
 4年前、教室では定期演奏会を開催するために宣伝や準備を進めている中、熊本地震が発生しました。開催予定の会場や熊本県内のコンサートホールも被災したため急遽、鹿児島県で熊本地震被災地支援チャリティーコンサートとして演奏会を開催し、たくさんの方々のご協力とご支援で集まった支援金を熊本県に寄付する事ができました。
 今回は、熊本のシンボル熊本城が一日も早く復興し、被災された方々や県民の皆様の励みとなるように、また地震前の元気な熊本をとり戻すために音楽の力で少しでも応援したいと劉福君先生が企画されました。
コンサートには劉先生と同じ地元の熊本交響楽団様にご協力をいただき、指揮は大阪から日本華楽団の龔林先生、ゲストに二胡奏者武楽群さん、チェンミンさん、揚琴奏者沈兵さん、そして日本華楽団様、劉福君九州二胡教室の生徒、総勢200名が出演しました。

 オープニングは、音楽博士であり、作曲家でもある龔林先生の編曲指揮で、「胡琴祭序曲」。
会場いっぱいに高らかに響きわたるオーケストラの美しい演奏が流れ、劉先生を中心に舞台下の客席前に上手下手の両側から生徒たち26名も入場しました。オーケストラをバックに二胡奏者150名による「田園春色」のメロディーが美しく心地よく奏でられ、未来の夢や幸せを表現しました。
 続いて「シルクロードのテーマ曲」が演奏されました。
二胡はシルクロードを通って中国に伝わってきた楽器だと考えられています。二胡の歴史とロマンを感じさせる壮大な二胡とオーケストラのハーモニーにお客様からたくさんの拍手をいただき感激しました。
 オープニング2曲は、総勢200名の二胡とオーケストラの編成。このような演奏形態は、大変珍しいとの事で、舞台から舞台下まで奏者で埋め尽くされた風景に圧倒されたお客様も多かったと思います。

 大合奏の後は、熊本交響楽団創設メンバーで、団員代表でもある熊本大学 名誉教授 山﨑崇伸様からご挨拶をいただきました。東洋のヴァイオリンといわれる二胡と西洋楽器ヴァイオリンの共通点など楽器についてもご紹介いただきました。

 第一部の先生方の独奏は、武楽群先生がヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ハープの伴奏で二胡の名曲「二泉映月」を披露してくださいました。
武先生は、演奏家としてだけではなく、2011年東日本大震災の瓦礫で作られた「津波ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ」の裏版に「奇跡な一本松」を描かれた画家としても有名です。今回演奏で使われたのは東北の津波で流された瓦礫の木材で作られた二胡でした。いろんな人達の魂が宿った木で作られた二胡の音色は、太く芯があり独特な温もりがありました。熊本の復興を願う思いが伝わり感動しました。

 続いては、揚琴演奏家、沈兵さんの「荒城の月」。沈兵さんが竹田城を訪れた時に深い感銘を受けて揚琴のソロ曲としてアレンジされた曲です。揚琴の独特な美しい調べに会場は魅了されました。

 第一部最後は、日本の二胡ブームの火付け役となったチェンミンさんに登場していただきました。代表的な作品は大河ドラマのテーマ曲、劇中曲とたくさんあります。
チェンミンさんは、2014年に熊本城で初めて演奏した際、とても感動し思い出がいっぱいあり熊本城でまた演奏したいと思っていた矢先に熊本地震が発生し、とても心を痛められたそうです。今回は、熊本城の朝をイメージして鳥のさえずりがこだまする優美な情景を表現した中国の名曲「空山鳥語」が披露され、二胡で奏でる鳥のさえずりに会場は笑顔で溢れました。
 続いてオリジナル曲「我が飛行 甲斐の国へ」、チェンミンさんの代名詞「燕になりたい」2曲を沈兵さんの揚琴伴奏で演奏していただきました。音楽の力で心が癒され勇気や希望に繋がるようにと思いが込められた演奏でした。

 第二部は、劉先生と生徒による「豫北叙事曲」の斉奏から始まりました。
劉先生を中心に艶やかな衣装で九州各県から12名の生徒が共演しました。
この曲は、4つの部分で構成され、悲しみや喜び、豊かな感情や明るい未来への憧れを表現する難易度の高い曲です。全員揃っての練習は、本番前のリハーサルのみでしたが、劉先生との掛け合いも気持ちを一つに演奏されました。

 続いては、大阪から参加していただいた日本華楽団20名の皆さんの演奏。
以前より劉福君九州二胡教室と交流をしていただいています。今回は、劉先生の代表作で多くの二胡奏者に愛され演奏されている名曲「島の風」と「草原情」の2曲が披露されました。
龔林先生の打楽器に合わせ、高胡、二胡、中胡、小阮、チェロのアンサンブルで、沖縄の音調を優しく美しく、またモンゴルの大草原の美しい風景と、そこで暮らす純粋な遊牧民の陽気な表情を豊かに演奏してくださいました。

 第二部最後の演奏は、劉先生と熊本交響楽団の共奏「長城随想曲」。
世界最大の中国の巨大な建造物「万里の長城」の曲で、中国数千年の歴史と同じように長い年月の試練に耐え今日に至る世界遺産。祖先に対する尊敬の意や民族の感情が込められた4つの楽章からなる曲で、今回は第3と第4楽章が披露されました。
 第3楽章は、万里の長城の壮大なスケールをイメージさせるオーケストラの響き、青く広がる空中に長く連なった城壁の風景が浮かんでくるようなイントロ。次第に静かな曲調へと展開し劉先生の演奏が始まりました。一音一音に込められた思いが伝わってくる豊かで深い二胡のメロディーが奏でられ、中盤の二胡独奏部分からは気迫溢れる演奏に圧倒されました。
 第4楽章では、伸びやかに歌う二胡のメロディーとしなやかなオーケストラの融合。
後半に向けて力強く響くハーモニーは、万里の長城と同じ様に、熊本城も長い年月の試練に耐え、未来へと繋がるよう願いが込められているような迫力ある素晴らしい演奏でした。
 劉先生の第二の故郷「熊本」、愛する熊本のシンボル「熊本城」の復興を心から願い、心が込められた演奏は会場の皆様の心の奥深くに響いたのではないでしょうか。

 そして会場の感動の拍手が鳴り止まない中、御年96歳でお元気に二胡を楽しんでいらっしゃる人生の大先輩、熊本教室の吉村始芽さんが紹介されました。90歳から二胡を習い始め、いつも前向きな生き方に私たち生徒は、元気と勇気をいただいています。
復興に向けて進んでいく熊本城を眺めながら、今日のコンサートに参加したことを皆さん思い出してください。とのメッセージに会場は歓声と拍手が沸き起こりました。
熊本城を見るたびに、私たちは今日の演奏会の事を一生忘れることなく思い出すことができるのです。本当に幸せに思います。
劉先生からは皆様への感謝とお礼の挨拶があり、舞台はクライマックスへ。

 アンコールは、出演者全員とゲストの先生方にも加わっていただき「賽馬」の大合奏。
会場に勢いよく馬のいな鳴き声が響きわたり会場のお客様と一体になり最高潮となりました。
最後は、熊本城の一日も早い復興を願い、会場のお客様にも参加していただき「故郷」の演奏に合わせて大合唱で幕を閉じました。

 今回、熊本を代表する市民オーケストラでありながら、全国的また海外への演奏訪問など幅広い活動を展開されている熊本交響楽団様と共演できたことで、オーケストラの重厚で美しい演奏に合わせて二胡を奏でるという貴重な体験ができました。
身体に伝わってくる色々な楽器の響きに感動し感謝の気持ちでいっぱいになりました。
お客様からも、このような迫力あるコンサートは初めてでしたと、感動の声をたくさんいただくことができました。

 このように熊本城の復興を願うコンサートは、皆様のご協力とご支援のおかげで、心に残る感動的な素晴らしいコンサートとなりました。
会場ロビーには、当日大分県から熊本城の復興を願って持参してくださった「清正の虎退治」の珍しい貴重な絵も展示させていただき、熊本県外からもたくさんの方が応援に駆けつけてくださいました。本当にありがとうございました。
ご来場いただきましたお客様に心より深く御礼申し上げます。
 また、山﨑崇伸様をはじめ熊本交響楽団の皆様、龔林先生、武楽群先生、チェンミン先生、沈兵先生、日本華楽団様、司会の村上幸子さん、ご出演ご協力いただきまして心より感謝申し上げます。

 最後になりましたが、後援いただきました各団体様、熊本県立劇場のスタッフの皆様には大変お世話になりました。心より御礼申し上げます。
 そして、一年以上かけて企画、準備にと尽力くださった劉福君先生に心より感謝申し上げます。たくさんの方々と一緒に熊本のために少しでも貢献できた喜びや経験を励みにこれからも精進していきたいと思います。

 今回のコンサートチケットと当日販売された先生方のCD販売収益金、募金の総額100万円は熊本城復興支援金として熊本市に寄付されました。
令和2年3月6日、劉福君先生と熊本交響楽団様から団員代表の山﨑崇伸様と常任理事運営委員長の梅田雄介様が熊本市役所を訪問され、大西一史熊本市長に寄付金が贈呈されましたことをここにご報告いたします。

レポート:須藤 小由美